第38回日本オープンゴルフ選手権(1973年)
2023.07.24
1973年10月12日付報知新聞
ベン・アルダが青木を逆転して初優勝、2年連続海外勢の手に
9月27日から4日間、大阪・茨木CC西コース(7075ヤード、パー72)で行われた。青木功、尾崎将司の「AO」が優勝候補、これに対して杉原輝雄を筆頭として宮本康弘、中村通らのちの関西若手四天王ら「茨木一門」が注目された。第1日、距離の長いコースに選手たちは苦しむ。「セカンドがロングアイアンのホールがほとんどだから本当にゴルフをやった気がする」と言ったのは河野高明。飛ばし屋有利と見られていたが、ふたを開けると伏兵が飛び出した。
首位に立ったのは、何明忠(台湾)、ベン・アルダ(フィリピン)の外国勢。ともに飛ばし屋ではなく、手堅いプレーをした2人だった。何はラフに入れたのが1度だけ、アルダはボギーなしのプレーでともに4アンダー68をマークした。
杉原と河野が1打差で3位につけた。杉原は9番6メートル、10番2.5メートルの連続バーディーなど後半パッティングが良くなった。インスタートの河野は10番でラフに入れてダブルボギー、13番でも左のがけ下に落としてダブルボギーとしたが、アウト4バーディーなどで盛り返した。
青木が2アンダーで5位、尾崎は1アンダーで杉本英世らとともに8位のスタートとなった。
第2日、AOが浮上した。当時、ジャンボ尾崎に対して、コンコルドと呼ばれていた青木は、2番2.5メートル、3番3メートルの連続バーディーで滑り出し、後半も14、15番連続バーディーなど68で回り、通算6アンダーで首位に立った。「今日はボールがピンに寄ったからポイと入れただけです」(報知新聞紙)と上機嫌だった。
尾崎はインから出て、10番で1.5メートルを入れ、11番パー5では2オン、12番では8メートルが入って3連続バーディーで一気に優勝戦線に。その後バーディーが来ない展開になったが、通算4アンダーで3位につけた。このタイトルを取れば、日本プロ、関東プロ・オープンにつづき、公式戦4冠(グランドスラム)を達成する。「あとは口だけ」と余裕を見せた。
69で回った島田幸作が通算5アンダー2位に浮上。前日首位の何は3アンダーの4位、アルダは2アンダーの6位に後退した。
第3日、青木にアクシデントが起こった。2番2.5メートル、3番3メートルを入れ、6番では3.5メートルと前半3バーディーの青木は快調に伸ばしたが、アウト終盤からパットのタッチが合わなくなった。実はヘッドとの接続部分のシャフトにひび割れができ「思い切って打つと折れそうな気がして」(日刊スポーツ紙)と加減していた。それでも7番からすべてパーで切り抜け、通算9アンダーで首位を守った。
競りかけてきたのが島田。「3メートルぐらいからでも3パットの可能性が大ありだから」と慎重にプレーを進め、終盤にエンジンをかけた。16番で4メートルを入れ、18番パー5で80センチに寄せてバーディーを奪い、青木に1打差2位をキープした。
最終日に向け、青木は「自分のゴルフをやって負けたら仕方ない」といい、島田は「ネチネチした僕のゴルフを続ける事だけが目標」と話している。
その最終日、青木が6番でバンカーに入れてボギーとする。島田も伸ばせずにいる中で、3打差でスタートしたアルダが、2,4番で取り、6番で4メートルを沈めて青木を逆転、首位に立った。島田が12番のOBで脱落。青木が14番で7メートルを入れてアルダに追いつき、首位並走で最終18番パー5に。青木がラフからの第2打を6番アイアンで左の池に入れるまさかのOBで万事休した。
「ボールの前に小さな枯れ木があり、それを越えようとしてダフッた」と振り返った青木はロッカーの椅子に座り、頭を抱えて泣いた。報知新聞紙によると、出てきたときは涙ぐみながら「頼むからもう何も聞かないでよ」と声を絞り出したという。
通算10アンダーで優勝したアルダは「相手のことは一切考えないことにした。待てば必ず幸運が舞い込むと信じていた」と笑顔を見せた。日本オープンのタイトルは、前年の韓長相(韓国)に続き、2年連続で海外勢の手に渡った。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
ベン・アルダ1929年6月13日―2006年12月20日。フィリピン出身で、1952年フィリピン・オープンでデビュー。1960~70年代に極東サーキットを中心に活躍し、フィリピン・オープン3勝などサーキット9勝を挙げている。57年から日本の試合に出場し、73年ダンロップ・トーナメントで初優勝するなど、4勝を挙げた。62年にフィリピン選手として初めてマスターズに招待され(予選落ち)、ワールド・カップにはフィリピン代表として16回出場、77年にはラバレスと組んだ団体で2位に入っている。
第38回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | Ben Arda(PHL) | 278 | = 68 74 69 67 |
2 | 青木 功(日本電建) | 280 | = 70 68 69 73 |
3 | 何 明忠(台湾) | 282 | = 68 73 70 71 |
4 T | 尾崎 将司(日東興業) 島田 幸作(宝塚) |
283 | = 71 69 72 71 = 70 69 69 75 |
6 | 杉原 輝雄(ファーイースト) | 285 | = 69 76 67 73 |
7 T | 大嶋 正春((木偏に神)原) 安田 春雄(マルマン) 新井 規矩雄(フリー) |
286 | = 71 70 71 74 = 74 68 73 71 = 76 72 70 68 |
10 T | 陳 清波(TBS) 中村 通(東城陽) |
287 | = 74 70 74 69 = 77 67 73 70 |
参加者数 132名(アマ30名)