第36回日本オープンゴルフ選手権(1971年)
2023.06.26
1971年10月2日付日刊スポーツ
「玄海の荒法師」藤井義将が雨中のプレーオフを制し初優勝
9月28日~10月1日に愛知・愛知CC東山C(7105ヤード、パー74)で128人が参加して行われた。大会前の話題は、この年日本プロで初優勝した尾崎将司と、関東プロで初優勝の青木功。のちの「AO」が注目された。この年から1日18ホールの4日間の大会になっている。第1日、飛び出したのは青木だった。速いグリーンが特徴のコースに「攻めて行ったら難しい。何も考えずに乗せて行こうと思ったのがよかった」(日刊スポーツ紙)と振り返る。1、3番のパー5で第3打のアプローチを共に30センチに寄せて波に乗り、14番で10メートル、15番で8メートルなど長いパットも決まり、8アンダー66をマークした。
1打差の2位に陳健忠、2打差3位に杉原輝雄がつけた。「1日6アンダーで行けば」と話していた尾崎は5アンダーで回り、3打差3位グループでスタートした。
第2日、インスタートの青木は13番で3パットのボギーにするなど、前日とは打って変わってパッティングが不調に。「昨日あれほど入ったパットが入らなかった。(同組の選手に)おかしいねって言われたよ」と、1アンダー73と伸び悩んで通算9アンダー。69で追い上げた橘田規に並らばれたが、首位はキープした。
尾崎は2つスコアを伸ばし、2打差3位に浮上した。「ドライバーはまだ当たっています。3日目はぐっと引き締めていいゴルフをするから」(スポーツニッポン紙)と話している。
第3日、インからスタートをした。青木が粘る。11番でボギーにして橘田に首位を譲るが、14番パー5で追いつく。アウトに入って、3、6番でバーディーなどこの日3つ伸ばして通算12アンダーとし、首位を守った。「疲れてしまうよ」と、3日間トップにちょっと弱気な言葉も出たという。
尾崎は、杉本英世とのラウンド。その杉本が13番で13メートルのロングパットを沈めるなど5バーディー(1ボギー)を奪って通算11アンダーとし、青木に1打差2位に迫った。尾崎は「ファンはおれの長打を見に来るから」と言っていたが、この日はドライバーが荒れ気味でスタート10番でいきなり右林に入れるなど73に終わり、通算8アンダーで10位に後退した。
最終日、朝から雨が降り続いた。この日もインからのスタート。完全優勝を目指す青木は10番パー5で4メートルに2オンしていきなりイーブルを奪う。10、14番バーディーの杉本。2人の優勝争いになると誰もが思った。しかし、青木は後半7番パー3でOBを打ってトリプルボギーとし、杉本も雨で重くなったラフにてこずって伸び悩む。
2人が後半苦しむ間に上がってきたのが最終組の2組前で7位スタートの藤井義将だった。10番で1メートルのバーディーを決めた後も的確にグリーンをとらえ、7バーディー、2ボギーの69で通算14アンダーの首位でホールアウトした。
青木が脱落後、尾崎が8、9番連続バーディーにしたが通算13アンダーで藤井に届かず。杉本が最終9番で1メートルのバーディーを決めて通算14アンダーとし、藤井とのプレーオフになった。
10、11、12番の3ホール合計で争った。10番パー5を共にバーディー、11番をパーで最終12番へ。杉本が右の深いラフに入れ、第2打は右バンカーへ。藤井はフェアウエーからピン奥5メートルにオンしていた。杉本はバンカーからホームランし、やっと4オン。藤井が2パットで沈めて、初優勝を手にした。尾崎が3位、青木は2年連続最終組も4位だった。
藤井は42歳。福岡県出身で「玄海の荒法師」とも呼ばれ、尾崎がプロ野球からゴルフに転向した際の師でもあった。弟子を退け、日本オープンのトロフィーを初めて九州にもたらした。
「杉本君がラフに入れたのでこれなら勝てるなという気持ちがした」と振り返り、初優勝には「明日になりゃ感激もわくだろうが今はただうれしいだけ。頭が混乱してしまって…。優勝はもうあきらめていた。おれの体(165センチ、56キロ)ではもう通用しないと思ってね。ただ欲も得もなくコツコツと自分のゴルフだけに専念した」(スポーツニッポン紙)と、感無量の表情だった。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
藤井義将(ふじい・よしまさ)1929(昭和4)年7月1日~2015(平成27)年2月26日、福岡県出身。21歳でプロ入り。唐津GC、福岡CC和白Cを経て1962年に霞ヶ関CC(埼玉県)とトーナメントプロとしての年間契約を締結。従来のゴルフ場専属ではなく、トーナメント中心で活動する新しいスタイルの先駆けとなった。その後、故郷の玄海GCに移り、九州を拠点にする。切れ味鋭いショットで「玄海の荒法師」の異名を取り、日本オープンはじめレギュラー、シニア合わせて23勝を挙げている。九州で多くの後進を育てたことでも知られ、尾崎将司がプロ野球西鉄ライオンズの選手からプロゴルファーを目指した際に最初に門を叩いたのが藤井だった。日本プロゴルフ協会では1974年から88年にかけて理事を務め、2004年には文部科学省スポーツ功労者顕彰を受けている。2017年度に日本プロゴルフ殿堂入り。
第36回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 藤井 義将(玄海) | ※282 | = 71 70 72 69 |
2 | 杉本 英世(アジア下館) | 282 | = 71 70 70 71 |
3 | 尾崎 将司(習志野) | 283 | = 69 72 73 69 |
4 | 青木 功(関東PGA) | 284 | = 66 73 71 74 |
5 T | 森 憲二(川崎国際) 村上 隆(関東PGA) |
285 | = 73 69 74 69 = 71 72 72 70 |
7 T | 日吉 定雄(関東PGA) 島田 幸作(宝塚) 橘田 規(関西PGA) 草壁 政治(紫) |
286 | = 70 72 72 72 = 73 68 72 73 = 70 69 73 74 = 69 72 70 75 |
※プレーオフ
参加者数 128名(アマ33名)