第32回日本オープンゴルフ選手権(1967年)
2023.04.24
1967年10月5日付スポーツニッポン
橘田規がホームコースで2年ぶり2度目の日本一
10月2~4日、広野GCで行われた。6970ヤード、パー72の設定で、プロ92人、アマチュア73人の計165人が参加した。第1日、小雨模様の中だったが、コースコンディションはまずまずだったという。首位に立ったのは、広野GC所属の橘田規だった。スタートの1番パー5で2オンしながら3パットのパーでいい出だしはなかったが、1アンダーで折り返してインから調子を上げた。10番2メートル、11番2メートル、12番50センチと「磁石にすいつけられるように」(スポーツニッポン紙)ピンに絡んで3連続バーディー。15番で70センチのバーディーパットを外し、18番でボギーとしたが3アンダー69で飛び出した。もう1人、木本挙国が前半のパー5で2つのバーディーを取り、14番では第2打を直接入れるイーグルなどこちらも3アンダーをマークして首位に並んだ。
第2日、ホームコースの橘田がさらにスコアを伸ばした。5バーディー、1ボギーの68で通算7アンダーまで伸ばした。グリーンを外したのは2度。その中の7番パー3では左に外してアプローチもピン奥7メートルとミスしたが「入るとは思わなかった」(日刊スポーツ紙)というフックラインを入れてパーに収めるなどツキもあった。優勝の可能性を聞かれ「明日にならんと分からんよ」と話したという。
三浦勝利がアイアンショットの切れで3アンダー69をマークし、橘田に4打差の2位に浮上した。同じく69で回った杉原輝雄と石井朝夫が5打差の3位に並んだ。木本は75をたたいて8位に後退した。
最終日、36ホール勝負の午前18ホールで橘田は2つスコアを伸ばし、通算9アンダーとして独走態勢に入った。午後、橘田を追いかけたのが石井朝と杉原だった。石井朝はアウトを32、杉原は33で回って、伸び悩んだ橘田に追いすがった。橘田は10アンダーで迎えた16番で左ラフからの第2打を左にOB。打ち直した第4打をバンカーに入れ、トリプルボギーで貯金を吐き出した。続く17番パー3でも第1打を左アンカーに入れ、第2打も寄らずボギーと6アンダーまで後退した。石井朝は15番バーディーで6アンダーとして橘田を捕らえた。しかし終盤、追走していた2人が崩れる。まず5アンダーの杉原が17番でグリーン右に外し、アプローチもグリーンオーバーしてダブルボギー。後ろをいく石井朝は16番で2メートルのバーディーを逃した後の17番でダブルボギーと、ともに自滅した形になった。
橘田はそのままパーでしのいで逃げ切り、うれしいホームコースで2年ぶり2度目の戴冠となった。日刊スポーツ紙によると「長い間ゴルフをやっているが、こんな孤独を感じたことはない」というのが最初に口にした言葉だったという。独走態勢で迎えた最終日だったが「だれかに追いつかれないか、逆転されるんではないか」と絶えず脅かされていたという。そんな不安が現実になりかけた16番について「ちょっと気を抜いたのがいけなかった。さすがに慌てたよ」と照れ笑いを浮かべたという。
この年、橘田は「どうもこうもパットがうまくいかなかった」とタイトルなしでここまで来ていた。ただ、ホームコースでの日本オープン開催に「この大会は初めから狙っていた」と振り返る。1957年に関西プロを制してトッププロの仲間入りを果たして10年。「ひと区切りついた」とほっとした表情も見せたという。
ちなみにこの大会とほぼ同じ日程で、パーマー、ニクラウス、プレーヤーの3人が来日して行ったエキシビションマッチ「ビッグ3シリーズ」第2戦が愛知・名古屋GC和合Cで行われていた。スポーツ紙各紙は大きく扱っているが、橘田の優勝も1面での報道になっている新聞もあった。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
橘田規(きった・ただし)1934(昭和9)年4月20日~2003(平成15)年3月22日。19歳でプロ入りし、23歳の時に関西プロで初優勝。米国留学ではゴルフ場のプロショップで働きながら言葉やシステムを学び、技術的にも大きく成長した。トップの位置が低く「水平打法」として知られている。日本3冠(日本プロ2勝、日本オープン2勝、日本プロマッチプレー)を達成したほか、関西オープン3勝、関西プロ2勝はじめ主要タイトルをほぼ手中にしている。1961年から5年連続でワールドカップ代表。弟・光弘も1970年に日本オープンを制し、初の兄弟優勝を飾っている。2015年度に日本プロゴルフ殿堂入り。
第32回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 橘田 規(広野) | 282 | = 69 68 70 75 |
2 T | 杉原 輝雄(関西PGA) 石井 朝夫(中山) |
285 | = 73 69 72 71 = 73 69 73 70 |
4 T | 陳 清波(関東PGA) 安田 春雄(関東PGA) |
286 | = 70 74 73 69 = 74 71 71 70 |
6 T | 杉本 英世(関東PGA) 能田 征二(城陽) |
287 | = 71 74 70 72 = 72 76 70 69 |
8 | 石井 哲雄(広野) | 288 | = 72 71 72 73 |
9 T | 謝 永郁(台湾) 村上 隆(関東PGA) 河野 高明(芙蓉) 河野 光隆(程ヶ谷) |
289 | = 72 73 72 72 = 72 72 76 69 = 72 71 74 72 = 72 72 72 73 |
参加者数 155名(アマ64名)