第26回日本オープンゴルフ選手権(1961年)
2023.01.30
1961年11月11日付日刊スポーツ
細石憲二が暗闇の5人プレーオフを制して初優勝
この年、歴史に残る大激戦が展開された。11月8~10日、千葉・鷹之台CC(7070ヤード、パー72)で開催された。第1日は、出場171人(172人記載記事あり、うちアマチュア59人)と大人数で行われた。第1の予選カットが設けられていた。コース記録タイの3アンダー63で首位に立ったのは、中村寅吉と佐藤精一。中村はインスタートを1アンダーで折り返し、2番で3メートル、4番パー5では第2打でエッジまで運んでバーディーと伸ばし、5番ボギーとしたが最終9番で6メートルを決めた。「じゅうたんみたいなグリーン。入らなければどうかしている」とパッティングにさえを見せた。
佐藤は4アンダーで最終9番に来たが、グリーンを外し、1メートルほどのパーパットをちょこんと打って外した。報知新聞紙によると、グリーンサイドの先輩から「なぜ慎重にやらんか」と叱られたが、本人は「あの調子で入ってきたんだ。おれはゆっくりやったらノー感じ」と聞き流していたという。
6オーバー78までの91人が第2日に進んだ。フィリピンオープン優勝で期待されたベン・アルダはここで落ちた。
第2日は中村がパープレー72で回り、通算3アンダーで単独首位に立った。高速グリーンに対応するためにパターを愛用のカマボコ型(マレット型)からキャッシュイン型に替えて臨んでおり、4,5番でバーディーと快調だったが、後半からショットが乱れて伸ばせなかった。
呂良煥(台湾)が1打差2位に浮上。後半に入って11番で8メートルを入れてからパットが決まり出し、14番1.5メートル、17番8メートル、18番2メートルを入れるなど、2アンダー70で回った。もう1人、小野光一が71でジワリと上がった。1,4,7番バーディーで一時は中村を捕らえたが、9番でボギーをたたいて1打差で終えた。
通算9オーバー49位タイまでの54人が最終日に進んだ。
36ホールで行われた最終日は、大混戦になった。中村が2オーバーと崩したこともあり、午前18ホールを終えて首位に立ったのは小野で通算2アンダー。1打差で中村、陳清波、謝永郁、勝俣功、3打差で細石憲二、4打差で呂という展開になった。午後、アウトを終えて小野が3アンダーで独走、3打差で細石が追う形に。逃げ切り濃厚だった小野がインで4ボギーをたたいて自滅、後続も伸びず、通算1オーバーに細石、謝、陳、勝俣、小野が並び、史上最多の5人プレーオフに突入した。
1、7、8番の3ホールの合計ストロークで争うプレーオフは、日が暮れてクラブハウスに明かりがともされたころに始まった。1番で小野、7番で陳がボギーとし、最後の8番で謝がボギー、勝俣がダブルボギーをたたいた。3ホール全てパーを取った細石がプレーオフを制した。最後はほぼ真っ暗で、競技委員がカップに懐中電灯をつけ、細石は10メートルほどのパットを10センチに寄せての勝利だったと、日刊スポーツ紙が伝える。
細石は24歳で初の日本タイトル。前年の日本プロ(当時決勝ラウンドマッチプレー)の決勝で棚網良平に敗れて2位、この年の日本プロでは3位になって上り調子の選手だった。
プレーオフ2ホール目でバンカーに入れた時は「ボールの行方に任せて打ったら30センチにつきました」といい、最後のパッティングについて「キャディーの言う距離通り打った」と、ボールの見えない中でのプレーを振り返った。初優勝に「どうせマークされていないので気楽でした。今大会はアプローチとパットが非常によかった」と勝因を挙げている。
この大会は「暗闇のプレーオフ」として、今も語り草になっている。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
細石憲二(ほそいし・けんじ)1937年(昭和12年)3月25日~ 2001年(平成13年)8月22日。福岡県出身。キャディーをしていた13歳からゴルフを始め、1955年にプロ入り。61年日本オープンで5人のプレーオフを制し、トッププロの仲間入り。63年中日クラウンズなど通算7勝。アジアサーキットでも活躍し、67年インドオープン(準イベント)に勝ち、翌68年にはマレーシアオープンを制した後、インドオープン(準イベント)で大会連覇を果たしている。同年には河野高明とともにワールドカップ代表になり、10位になっている。
第26回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 細石 憲二(下関) | ※289 | = 74 73 70 72 |
2 T | 小野 光一(程ヶ谷) 謝 永郁(台湾) 勝俣 功(大箱根) 陳 清波(東京) |
289 | = 71 71 72 75 = 73 70 72 74 = 71 74 70 74 = 74 71 70 74 |
6 | 中村 寅吉(関東PGA) | 291 | = 69 72 74 76 |
7 T | 陳 健忠(台湾) 石井 哲雄(広野) |
292 | = 75 73 71 73 = 75 69 73 75 |
9 T | 新井 進(城陽) 呂 良煥(台湾) 小針 春芳(那須) |
293 | = 76 72 75 70 = 72 70 76 75 = 73 73 75 72 |
※プレーオフ
参加者数 171名(アマ59名)