優勝カップを掲げる裴相文（JGAホームページより転載）

裴相文がプレーオフで久保谷健一を下して初優勝

　2011年３月に起きた東日本大震災。大会は「震災復興支援グリーン・ティーチャリティー」と銘打って開催された。会場は、千葉・鷹之台CC（7061ヤード、パー71）。
　大会前の話題は、この年賞金王争いをしていた石川遼と、同年齢で前年日本オープン３位でローアマを獲得した東北福祉大３年のアマ、松山英樹だった。
　第1日、石川が出遅れた。1バーディー、５ボギーの75をたたいて68位発進になった。「1つの油断も許されない。初めてメジャーというのを肌で感じた。もっとできる、とボギーが出るたびに焦ってしまった」（スポーツ報知紙）と振り返った。
　松山も２バーディー、３ボギーの72で25位発進となり「後半、ショットが乱れて苦しかった」と振り返った。
　趙珉珪（韓国）が４アンダーで首位に立った。この大会前週に優勝して２週連続優勝を狙う久保谷健一ら７人が２打差２位につけた。
　第２日、注目の２人、石川は４バーディー、２ボギーの69をマークして通算２オーバーとし、予選落ちピンチから20位に急上昇した。松山は76と崩れたが、通算６オーバー58位でギリギリ予選通過した。
　通算５アンダーで首位に立ったのは、オーストラリアのネベン・ベーシック。1打差２位で河瀬賢史がつけた。JGAHPによると、河瀬は２日間で11バーディーを奪う攻撃的なゴルフを展開。「難しいコースなんですけど、相性がいいんですよ。このコースと僕の相性が、かなりいいな、と練習日に感じたんです」と手ごたえを感じていた。
　第３日、ベテラン41歳の佐藤信人が３アンダー68をマーク、通算６アンダーで首位に浮上した。ツアー通算９勝のうち、日本プロ、マッチプレー、ツアー選手権と日本タイトルを３つ持っているが、パッティングの不振に悩み、シード権も失っていた。「手が動かなくなるかもしれないけど、上手に付き合う。優勝の感覚を体が覚えてくれているかも」（スポーツ報知紙）と、意気込みを見せた。
　最終日、スコアを落とした佐藤と、1組前を回った４打差３位スタートの裴相文（韓国）、ツアー２週連続優勝を目指す５打差４位スタートの久保谷の優勝争いになった。
　裴は通算1アンダーで迎えた14番パー５で、第２打を1.2ｍに乗せ、イーグルを奪ったのが効いた。15番でボギーにしたが、通算２アンダーでホールアウトした。同組の久保谷は12番のバーディーで通算２アンダーに浮上し、こちらもそのままホールアウト。２人で佐藤を待った。
　佐藤は９年ぶり優勝のチャンスに緊張感が漂い、10番でダブルボギーにするなど通算1アンダーに落としていた。最終18番、４ｍのバーディーパットが外れ、３位に終わった。「朝から手の動きが普通じゃなかった感じでした。最後は、クラブを振って球を打っていただけでした。でも、崩れながらも、我慢したのは、いい勉強・経験になりました」（JGAHP）と振り返った。注目された石川は18位、松山は44位だった。
　裴と久保谷のプレーオフ。１ホール目の18番で、先に打った久保谷が大きく左に曲げて林に近いラフ、裵はフェアウエーに置いた。久保谷の第２打がグリーンを大きくショートしてボギー。パーに収めた裴が、公式戦初優勝を飾った。
　久保谷は「激闘？　じゃないですね。向こうは勝ちに来ていて、僕はどれだけ耐えるか、だったので」と振り返り「ギャラリーの大きな声援に応えられなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と話した。
　前年の金庚泰に続く、韓国勢連覇を達成した裴は「（14番イーグルで）ボギー２つでもんもんとしていた気持ちを切り替えられた」といい「優勝を狙っていた。難しいコースだから、ボギーが出るのは仕方がない。でも、最小限に抑えて、それ以上のバーディーをとる。そういうゴルフができればチャンスがあると思いました」と会心の表情を見せた。
（文責・赤坂厚）

プロフィル

裴相文（ベ・サンムン）
1986年６月21日生まれ、韓国・大邱市出身。７歳からゴルフを始め、2003年17歳でプロ転向。08、09年に韓国ツアー賞金王となった。10年から日本ツアーに参戦。11年にVanaH杯KBCオーガスタで初優勝など３勝を挙げて賞金王となる。同年12月に米ツアーQTで出場権を獲得。13、14年に1勝ずつを挙げた。アジアンツアー３勝などを含めて世界で13勝を挙げている。

第76回日本オープンゴルフ選手権