優勝カップを掲げる手嶋多一（ＪＧＡホームページより転載）

手嶋多一が粘りのゴルフで逃げ切って初優勝

　21世紀最初の日本オープンは、埼玉・東京ＧＣ（6908ヤード、パー71）での開催になった。深いラフは芝を起こしてさらに難しくしていたが、グリーンが固くなかったのが、スコアにどう影響するかが注目されていた。
　第1日、佐藤信人が首位に立った。４つスコアを伸ばして後半、13、14番の連続バーで一時６アンダーとした。17番でボギーとしたが５アンダー66。前年日本プロを制しており、日本タイトル２冠へ好発進したが「その意識はまだありません」（日刊スポーツ紙）と話した。
　1打差２位に友利勝良、予選会から出場の立山光広がつけ、２打差４位に伊澤利光（当時登録名伊沢）、宮本勝昌、手嶋多一、久保谷健一と実力者が並んだ。1988年にこのコースで優勝した尾崎将司は17番パー３でシャンクして隣の18番に打ち込むボギーで1アンダー17位発進。史上初の大会３連覇を目指す尾崎直道は1オーバー33位と出遅れた。
　第２日、上位陣が伸び悩み、混戦となってきた中で、２日連続60台の68で回った白浜育男が通算５アンダーに伸ばし、９度目の出場で初めて首位に立った。東京ＧＣの近くに住んでおり「何度か練習させてもらった」といい「いい感じでショットできて流れをつかんだ」と振り返った。
　２打差２位に佐藤信ら５人が並び、大会４勝を挙げている46歳の中嶋常幸が通算２アンダーで３打差７位に浮上した。５番から３連続ボギーもあったが、12番から３連続バーディーもあり、６バーディー、５ボギーの出入りの激しいゴルフながらスコアを伸ばした。「日本オープンだと黙っていても力が入ってしまう」と照れ笑いし、このコースでの1988年大会で尾崎将に逆転負けしたことには「清算した。気持ちは新人」と話した。
　第３日、通算５アンダーを挟んでの混戦から、一歩抜け出したのが99年にツアー初優勝している手嶋。最終18番でこの日６個目のバーディー（２ボギー）を奪い、67をマークして通算６アンダーとして首位に立った。今回は「攻めながら守る」とテーマにプレーしているといい「すごいセッティングのコースとの闘い。ここまで来たんでやれるだけやります」と話した。
　２打差２位に友利が粘り、３打差３位に白浜と深堀圭一郎がつけた。３連覇を目指した尾崎直は76をたたいて通算9オーバー45位に後退し「ジエンド。３日間でバーディー２つじゃ、ショック」と嘆いた。
　最終日、手嶋が「我慢」のゴルフで逃げ切った。前半1つ伸ばして７アンダーとして抜け出したが、インに入ってショットが乱れた。フェアウエーをとらえられなくなった。15番では右のギャラリー席に打ち込み、右バンカーまで運んでパーセーブ。16番では左セミラフからアゴが高い左バンカーに打ち込んだがパーセーブなど、13番から４ホール連続１パットのパーで拾った。「今回、必ず勝つんだという気持ちに仕向けた」と振り返るように、ショットがままならなくてもスコアを何とか持ちこたえた。
　スポーツ報知紙によると、最終日は18ホールでパーオンしたのは６回、そのうち５ホールでバーディーを奪っている。アウトを12パット、イン11パットの計24パットでしのいで、初優勝を手にした。「ゲリラゴルフ、優勝は僕でいいんでしょうか」とおどけた。
　結局、難コースにスコアは伸び悩み、第1日の首位スコア５アンダーを４日間トータルで超えたのは、７アンダーの手嶋1人だけだった。1オーバー７位で宮里優作がベストアマに輝いた。
（文責・赤坂厚）

プロフィル

手嶋多一（てしま・たいち）
1968年10月16日生まれ、福岡県出身。実家が営む練習場で７歳からゴルフを始め、小６で北九州ＣＣのクラブ競技に優勝。田川高１年時の1984年に15歳355日の日本オープン最年少予選通過記録をつくり、2014年に塗り替えられるまで30年間破られなかった。米国留学を経て93年にプロ入り。99年ファンケル沖縄オープンでプレーオフを制して初優勝。01年日本オープン、14年日本プロと日本タイトル２冠。15年に46歳で所属先が主催者のミズノオープンを制し、ツアー通算８勝。18年まで22年間賞金シード権を保持した。04年には選手会長を務めた。シニアツアーでは2021年日本シニアオープンなど２勝を挙げている。

第66回日本オープンゴルフ選手権