第58回日本オープンゴルフ選手権(1993年)
2024.05.27
優勝カップを掲げる奥田靖己(JGAホームページより転載)
奥田靖己がAON優勝独占を8年連続で阻止
滋賀・琵琶湖CC(6879ヤード、パー71)で行われた大会は、周囲を驚かせる幕開けになった。第1日、首位に立ったのは、50歳を迎えてシニア入りした安田春雄。1番でいきなりチップインバーディーを奪うなど、5アンダー66をマーク。「いいスコアが出せて幸せ者だ」(日刊スポーツ紙より)と話した。1970年代に「和製ビッグ3」の一角として活躍。日本オープンに初めて出場した1963年、優勝争いに加わったが、戸田藤一郎に敗れた。その時に戸田が作ったのが48歳10カ月の最年長優勝記録。時を経て、自分が挑戦することになり「1日だけじゃ格好悪いから、もう1日頑張るよ」と笑わせた。
前年まで8年間、優勝を独占してきたAONは、中嶋常幸(当時登録名中島)が2打差2位、尾崎将司が3打差3位と好発進した。
第2日、朝から雨が降り続いた。ラフがさらに重さを増し、スコアが伸びない。その中で連覇で5度目の優勝を狙う尾崎将が耐えた。4番でチップインバーディーを奪うなど、2バーディー、3ボギーと1つスコアを落としたが、通算1アンダーで首位に立った。
もう1人、奥田靖己が同じく1アンダーで並んだ。この日は9ホールを1パットパーで切り抜ける粘りのゴルフ。「大満足」といい、尾崎将との対決に「日本一強いプレーヤーだけど、考えないようにやりたい」と話した。
通算アンダーパーは2人だけ、予選通過ラインが10オーバーまで下がった。
第3日、尾崎将が抜け出した。7番の第2打でホールを横切る高圧線にボールが当たり打ち直すハプニングをバーディーにして調子を上げ、通算3アンダーとした。スポーツ報知紙によると、「いい位置にいるのはまとめのうまさの差」と自画自賛し「オレが一番苦労していると思っている。日本オープンは苦労した人間が勝つことになっている」と自信を見せた。
奥田はスコアを伸ばせず、2打差2位に後退した。この日、ベストスコア68を出して4打差3位に浮上したのが56歳の杉原輝雄。1番をダブルボギーでスタートしながら盛り返し、6番以降5バーディーを奪った。最年長優勝記録更新の期待に「上の人間次第やけど、あと2つ、3つ伸ばしたら面白いんやないか」と意欲を見せていた。
最終日、尾崎将が苦しんだ。新しいドライバーに変えたのが裏目に出て、7番で左の谷に落とすダブルボギーを含めて前半で4つスコアを落とした。2位につけていた奥田が、8、9番の連続バーディーもあって、押し出されるように首位に立つ。奥田は後半も11番でバーディーを取り、あとはパーを積み重ねた。終わってみれば、奥田はただ1人のアンダーパーの通算3アンダー。2位尾崎将に5打差をつけて、初の日本一に輝いた。
この8年、AONで独占してきたこのタイトルが、久しぶりに3人以外の手に渡った。大阪市出身で、関西勢としては1976年島田幸作以来17年ぶりの優勝ともなった。
尾崎将目当ての大ギャラリーにも「あれだけいたら垣根みたいなもんや」と動じなかった。日刊スポーツによると、甲南大時代に日本オープンの学生アルバイトで尾崎将の組のマーカーを務めたのが、この大会との最初のかかわりだったという。そんな因縁に「(尾崎将と)一緒だと情けないゴルフはできないから、最後まで集中力を保てた。その試合に勝てるとは夢にも思わなかった」と、感激の面持ちだった。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
奥田靖己(おくだ・せいき)1960(昭和35)年4月1日生まれ、大阪府出身。小学校5年の時から父にゴルフの手ほどきを受けるが、大阪市立南高時代は応援団に所属。進学した甲南大でゴルフ部に入り、4年時に関西学生リーグ最優秀選手になっている。卒業後はゴルフ用品メーカーに就職したが脱サラ。作州武蔵CCに研修生で入り、高松志門の下で修業。1985年にプロテストに一発合格した。90年中四国オープンでツアー初優勝、93年日本オープンなどツアー通算6勝。シニアツアーでも1勝を挙げている。
第58回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 奥田 靖己(作州武蔵) | 281 | = 69 72 71 69 |
2 | 尾崎 将司(ジャンボ尾崎) | 286 | = 69 72 69 76 |
3T | 片山 晋呉(つくばね) 井戸木 鴻樹(箕面) 川岸 良兼(ミズノ) |
287 | = 70 75 71 71 = 73 72 70 72 = 73 70 71 73 |
6 | 倉本 昌弘(富士ゼロックス) | 288 | = 73 73 69 73 |
7 | 中島 常幸(ミズノ) | 289 | = 68 77 73 71 |
8T | 水巻 善典(エース交易) 尾崎 直道(日東興業) |
290 | = 73 72 74 71 = 73 73 72 72 |
10T | 渡辺 司(ザ・ノースカントリー) 西川 哲(フリー) David Ishii(USA) 中瀬 寿(朽木) 室田 淳(グランクリュ) |
291 | = 72 73 74 72 = 72 73 74 72 = 73 76 68 74 = 73 71 73 74 = 73 73 70 75 |
参加者数 108名(アマ14名)