第55回日本オープンゴルフ選手権(1990年)
2024.04.15
優勝カップを掲げる中嶋常幸(JGAホームページより転載)
ジャンボを逆転して中嶋常幸が4年ぶり3度目の優勝
1990(平成2)年の日本オープンは55回目にして初めて北海道が舞台となった。会場は小樽カントリー倶楽部新コース(7119ヤード、パー72)。安田幸吉設計のコースである。大会史上初の3連覇を目指す尾崎将司はここまで国内10戦4勝と強烈な存在感を放っていた。尿管結石の影響で欠場があり3週間ぶりの実戦だったが17番まで4バーディー、ボギーなしと見事なプレーを披露する。だが、18番パー4で左ラフからの2打目が50ヤードしか飛ばずにダブルボギー。2アンダー、70は首位飯合肇から3打差の3位発進となった。
初日68で2位につけた中嶋(当時の登録名は中島)常幸が2日目は2バーディー、1ボギーの71にまとめ通算5アンダーで単独首位に立つ。尾崎は2日連続の70で通算4アンダー。1打差2位に浮上した。
3日目、尾崎が同組で回った中嶋を圧倒した。アウトで4アンダー、32をマークして首位を奪うとインは2バーディー、2ボギーで通算8アンダー。73と苦戦して3位に後退した中嶋に4打差をつけた。
2位に浮上したのは尾崎と同じ68で回った23歳の川岸良兼だ。前年11月にプロデビューしたばかりながら早くも2勝を挙げている“怪物”がONと最終日最終組で激突することになった。
この人も負けてはいない。左肩を痛めた影響で5週間ぶりに復帰した青木功は初日こそ73にとどまったが2日目以降は71、69と反撃して通算3アンダーの4位にまで上がってきたのだ。日本プロゴルフ界を牽引してきたAONに勢いがある川岸。役者がそろった。
最終日は前日から5度余り気温が下がり、肌寒い気候となった。
尾崎が2番でバーディーを先行させる。差が5打に広がった中嶋はこの時、相手を意識するのではなくコースと向き合うことを心に決めた。
6番、中嶋は4mを沈めて初バーディー。尾崎が7番をボギーとして3打差に迫る。2位にいた川岸は2、3番連続ボギーと苦戦していた。
9番、中嶋が5mのバーディーパットを決めて2打差。そして12番パー3を迎えた。
先に打った中嶋が5番アイアンで1mにつけてバーディー。尾崎は右バンカーに入れてボギー。ついに並んだ。
試合はONのマッチレースになっていた。15番は両者ボギー。続く16番パー5で中嶋は寄せワンでパーセーブしたのに対して尾崎はラフを渡り歩いてボギー。中嶋が一歩前に出た。
17番パー3、尾崎はグリーンを捕えたものの3パットで3連続ボギー。パーの中嶋が2打差をつけた。
最終18番、中嶋は2打目を1m強につけて勝負を決めた。直後、中嶋は頬に鳥肌が立つのを感じた。それくらい特別な感情が沸き起こっていたのだ。コースには冬の訪れを告げる無数の雪虫が勝者を祝福するかのように舞っていた。
3年前の1987(昭和62)年、日本オープン3連覇を目指した中嶋は青木に1打差で敗れた。そこから苦闘が始まる。1988(昭和63)、89(平成1)年は勝利なし。1990年、日本オープンの3カ月前に復活優勝を飾ったばかりだった。
低迷を乗り越えてつかんだ4年ぶり3度目の日本オープンタイトル。中嶋は「技術的にも精神的にも成長した結果だと思う」(日刊スポーツより)と喜びをかみしめる。3連覇の偉業を逃した尾崎は「プレッシャーがきつかった。自分で自分を追い込んでしまった」(日刊スポーツより)と振り返った。
(文責・宮井善一)
プロフィル
中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954(昭和29)年10月20日生まれ、群馬県出身。73年に日本アマを当時最年少の18歳で制し、75年にプロ入り。76年の初優勝を皮切りに通算48勝を挙げ、賞金王は4回(82、83、85、86年)。日本オープンをはじめ日本と名のつくタイトルをアマチュアからシニアまでただ1人7つ制している。2018年度日本プロゴルフ殿堂入り。
第55回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 中島 常幸(ミズノ) | 281 | = 68 71 73 69 |
2 | 尾崎 将司(ジャンボ尾崎) | 283 | = 70 70 68 75 |
3 | 川岸 良兼(ミズノ) | 285 | = 73 70 68 74 |
4 | 青木 功(日本電建) | 286 | = 73 71 69 73 |
5 | 金井 清一(ダイワ精工) | 290 | = 72 75 69 74 |
6T | 鈴木 弘一(美野原) 加藤 秀樹(長太郎) 井戸木 鴻樹(箕面) |
291 | = 74 73 76 68 = 74 69 73 75 = 73 70 73 75 |
9 | 陳 志明(筑波産商) | 292 | = 77 74 67 74 |
10T | 板井 榮一(南光台) 安田 春雄(大徳興業) 飯合 肇(日東興業) |
293 | = 76 69 73 75 = 75 70 73 75 = 67 78 71 77 |
参加者数 131名(アマ24名)