第48回日本オープンゴルフ選手権(1983年)
2023.12.25
1983年10月3日付日刊スポーツ)
青木功が悲願の日本オープンタイトル
青木功にとって、ついに「その時」が来た。兵庫・六甲国際GC(6469m、パー72)で行われた大会は、フェアウエーを絞り、ラフはうねるように長くのばされていた。
第1日、このラフで中嶋常幸(当時登録名中島)が最終9番でフェアウエーをわずか2mほど外しただけでロストボールになるトリプルボギーをたたいた。倉本昌弘は最終9番で7番アイアンが根元から折れてヘッドが飛ぶアクシデント。倉本は4位、中嶋は23位発進となったが、優勝候補2人が第1日からアクシデントに見舞われた。テリー・ゲール(オーストラリア)が3アンダー69で首位に立った。
第2日、3打差5位でスタートした青木が魅せた。インスタートで10番バーディー後、11番で奥のカラーから15mほどをチップイン。14番ではグリーン手前の花道から10mほどをチップイン。折り返して2番、ラフからの第2打が届かず、グリーン手前から8番アイアンで転がしてこの日3つ目のチップインバーディーと、69をマークして通算3アンダーの2位に浮上した。
ゲールは68で回り、連日のベストスコアで通算7アンダーとリードを広げた。「ラフに入ってもギャラリーが踏みつけたいいライに止まっていることが多い。いいスコアが出るときほどラッキーがついて回る」(日刊スポーツ)と話した。
第3日、ゲールは難コースで安定したゴルフを見せる。パーを重ねて9、10番で連続バーディー。11番ボギーとしたが、14番で取り、2つスコアを伸ばして通算9アンダーとした。
追いかける青木は1番から3連続ボギーと苦しい展開に。8番で1つ取り返した後、12番から3連続バーディーで盛り返し、この日1つスコアを伸ばして2位をキープしたものの、ゲールとの差は5に広がった。「楽には勝たせない」と闘志を見せた。
浮上してきたのは尾崎直道と中嶋。「自分でも感心するほど頑張っている」(スポーツニッポン紙)という尾崎直は2アンダー70で回って首位と7打差ながら3位に。中嶋はインで3バーディーを奪って70。「何とかあきらめずに赤字にした」と通算1アンダー4位につけた。アンダーパーはこの4人しかいなくなった。
最終日、アウトを終えてゲールと青木の差は5のまま。またも青木の優勝は難しいという空気が漂った。しかし、ゲールが10番で3パットのボギーとして流れが変わってくる。13番で青木がバーディーを奪って3打差に。こうなると射程圏だ。ここまでやることがうまくいっていたゲールだったが、14番パー5で左ラフからの第2打を痛恨の左OB。ボギーに収めたが、差は2になった。16番でもボギー。ついに1打差になり、青木が17番パー3で50cmほどにつけるスーパーショットを見せて土壇場で追いついた。
18番ともにパーとし、通算7アンダーでプレーオフに突入した。1ホール目の17番でともにパー。2ホール目の18番。青木は残り約180mを4番ウッドでピン左3mに乗せた。「あれが決め手だった。オレが何十年もかけて磨き上げたショットなんだから」(日刊スポーツ)と振り返る会心の1打が、大事な場面で出た。ゲールは右のバンカーに入れ、ボギーに。青木は難なくパーで、ついに「その時」が来た。
18番グリーンで優勝者に差し出されたマイクに、目を赤くして「長かったよ…」とつぶやいた。日本オープンに挑戦すること16回目。何度も優勝争いをしてきて、その度に跳ね返されてきたタイトルだった。
史上8人目のグランドスラマー(日本プロ、オープン、関東・関西プロ、オープン)の仲間入りをした。1975年以降、日本タイトル4冠を称するようになってからは、村上隆に続いて2人目の快挙を成し遂げた。
「これまでほしいほしいと言い続けたし、思い続けてきた。それなのに勝てない。そこに1つの運命のようなものがあったのだろう。プレーオフの最後のパットだけはやっぱりしびれたね」(アサヒゴルフ誌)という言葉に思いが詰まっていた。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
青木功(あおき・いさお)1942(昭和17)年8月31日生まれ千葉県出身。中学卒業後、東京都民ゴルフ場に就職してゴルフの道へ。1964年にプロとなり、71年の関東プロで初優勝。国内では通算56勝(ツアー51勝)を挙げ、賞金王には5度輝いている。海外でも78年世界マッチプレー、83年ハワイアンオープン、87年コカ・コーラクラシックと、欧米豪の各ツアーで勝利を挙げた。シニア入り後は米チャンピオンズツアーで9勝している。2004年に世界殿堂入りし、08年には紫綬褒章を受章、13年に日本プロゴルフ殿堂入り、15年秋の叙勲で旭日小綬章受章。16年から日本ゴルフツアー機構(JGTO)会長を務める。
第48回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 青木 功(日本電建) | ※281 | = 72 69 71 69 |
2 | Terry Gale(AUS) | 281 | = 69 68 70 74 |
3 | 中島 常幸(美津濃) | 286 | = 74 71 70 71 |
4 | 倉本 昌弘(土佐) | 287 | = 71 78 70 68 |
5T | 陳 志明(台湾) 尾崎 直道(日東興業) |
288 | = 70 72 74 72 = 72 72 70 74 |
7T | 安田 春雄(カシオ) Graham Marsh(AUS) |
292 | = 75 71 75 71 = 74 72 71 75 |
9T | 吉村 金八(蒲生) 小林 富士夫(真名) |
293 | = 72 72 74 75 = 70 74 72 77 |
※プレーオフ
参加者数 148名(アマ20名)