第46回日本オープンゴルフ選手権(1981年)
2023.11.27
JGAHPより転載
羽川豊、プロ初優勝でレフティー初の日本タイトル
当時、音楽界を中心に「ニューウエーブ」という言葉が流行していた。ゴルフ界にもその波が来ていた。倉本昌弘、湯原信光、羽川豊の「若手三羽烏」を中心とした20代半ばまでの若い選手たちだった。この年、初めて岐阜県の日本ラインGC東コース(6218m、パー70)で行われた大会でも、その様相になった。
大会前、注目されていたのは「日本オープンになぜか勝てない」青木功。第1日、その青木が飛び出した。雨が降り、セッティングもプロ泣かせ。「簡単にパーをとれるホールがない」と話した青木が、3アンダー67をマークして首位にたった。9番パー5で8mほどのパーディーを沈めるなど、3つのパー5でバーディーを取り、6バーディー、3ボギー。「まるで最終日のピン位置だったから。よくできたね」(スポーツニッポン紙)とほっとした表情を見せた。
中嶋(当時登録名中島)常幸が1打差で2位。ツアーデビュー直後の1977年日本プロで勝ったコースに「(自分に)合っていると思いたい」と話した。
第2日、4オーバーの53位から出た倉本が巻き返した。「どうやって打っていいかわからない」と悩んでいたグリーン上だったが、この日は3~4mを決めるなど4バーディー、2ボギーの68。通算、2オーバーで3位に浮上した。
首位に立ったのは、連日パープレーで通算イーブンパーの森憲二。「予選を通ればと思っていたんだ。グリーンを外しているんだけど、寄せやすいところばかりで助かっている」と話した。青木は76をたたいて8位に後退。アンダーパーの選手がいなくなった。
第3日、一時通算5オーバーにスコアを落とした青木が後半チャージを見せた。11番から2~3mのバーディーパットを決める3連続バーディー。「どうにでもなれと本当に思ったとたんにバーディー。どうなっているんだろう」(日刊スポーツ紙)と16、18番でも取って67をマーク。通算イーブンパーとした。中嶋、謝敏男とともに、1アンダーで首位を守った森に1打差の2位に並んだ。
羽川、尾崎直道、ボビー・クランペットと、日米の若手が3打差6位につけ、倉本は9位に後退した。
最終日、通算イーブンパーのラインをめぐって攻防が繰り広げられた。首位スタートの森は2番のトリプルボギーでいったん後退したが、その後3バーディーで盛り返し、12番でボギーとして通算イーブンパーになっていた。
上がってきたのが羽川。一時通算3オーバーに落としたが、12番から3連続バーディーで通算イーブンパーに。森に並んで首位に立っていた最終18番、グリーンを外したがパーで切り抜けて、森を待った。
森は13番以降、3ホールを1パットパーで切り抜けるなど粘ってスコアを守ってきた。18番もグリーンを外し、アプローチで1mに。見守る羽川は「プレーオフを覚悟した」という。18年目のベテランもプレッシャーに押しつぶされたのだろうか、そのパーパットを外した。
その瞬間、羽川はポカンとした表情になったという。プロ初優勝が、日本最高峰の大会。レフティー(左打ち)として初めての優勝だった。
「じわじわとうれしさがわいてきました」といい「一緒にプロ入りした湯原が勝つ。倉本さんがどんどん勝っていく。僕だけ取り残されていくみたいで」と、三羽烏と呼ばれる中で焦りもあった中で、結果を残した。羽川は最終戦日本シリーズにも勝ち、翌1982年のマスターズに初招待されるなど、トッププロの階段を上って行った。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
羽川豊(はがわ・ゆたか)1957(昭和32)年12月8日生まれ、栃木県出身。数少ないレフティー(左打ち)の1人。専修大学在学中の1979年に日本学生ゴルフで優勝した。80年プロテストで当時のプロテスト新の通算8アンダーで1位合格し、倉本、湯原とともに「若手三羽烏」と期待された。翌81年に日本オープン、日本シリーズで優勝し、翌82年マスターズでレフティー最高の15位に入った。イップスに悩み、84年にシード権を失ったが、尾崎将司の下で復活を目指し、91年にはインペリアルトーナメントで8年ぶりに優勝した。ツアー通算5勝。シニアツアーでは2勝を挙げている。テレビ解説者などでも活躍中。
第46回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 羽川 豊(霞ヶ関) | 280 | = 74 69 69 68 |
2T | 中島 常幸(美津濃) 森 憲二(川崎国際) |
281 | = 68 74 68 71 = 70 70 69 72 |
4 | Bobby Clumpett(USA) | 282 | = 71 70 71 70 |
5 | 倉本 昌弘(土佐) | 283 | = 74 68 71 70 |
6T | 鈴木 規夫(城島高原) 謝 敏男(鳳凰) |
284 | = 72 71 71 70 = 74 70 66 74 |
8T | 新井 規矩雄(アデランス) 船戸川 育宏(南部富士) 青木 功(日本電建) |
285 | = 74 71 70 70 = 73 71 70 71 = 67 76 67 75 |
参加者数 135名(アマ25名)