第30回日本オープンゴルフ選手権(1965年)
2023.03.27
1965年10月9日付報知新聞
カナダカップ帰りの橘田規が初優勝
10月6~8日の3日間、初開催となる愛知・三好CC(7030ヤード、パー72)で121人(うちアマチュア27人)が参加して行われた。大会直前(9月30日~10月3日)にスペインでカナダカップ(現ワールドカップ)が開催されており、日本代表で13位だった前年覇者の杉本英世、橘田規と、台湾代表で7位だった陳清波が大会直前の帰国となり、戦前の優勝候補から外れていた。
第1日、首位に立ったのは石井朝夫。早朝から雨が降る中、関東オープン覇者は2番パー5で第3打を直接入れるイーグルを奪うなどアウト4アンダーで回り、インでも最終18番で4メートルを決めるなど5アンダー67のコース新記録をマークした。「週刊誌の運勢によると大吉なんだ。そのせいだろう」(日刊スポーツ紙)と笑い飛ばしたという。
予想に反して? カナダカップ組が好スタートを切った。陳はインに入って10、12、15、16番と取って4アンダーの1打差2位発進。橘田は前半は1オーバーだったが、後半に入り4バーディーを奪って3アンダー69で2打差3位につけた。杉本もパープレーにまとめて8位につけた。
「滑り込みの遠征組 予想を裏切り上位へ」の見出しの報知新聞によると、3人は24時間の飛行機旅で羽田に着いたのが4日午後5時半。名古屋行きの便に乗り換えて、名古屋のホテルに入ったのが午後8時を回っていた。
第2日、その3人の中で橘田が浮上する。アウト39とスコアを崩したがインに入って別人のようなゴルフを展開した。日刊スポーツ紙によると、10、11、14番で2メートル前後のバーディーを決め、15番パー5(500メートル)で2メートルに2オンしてイーグルを奪う。最終18番では10メートルのバーディーを決めてイン30の快スコアで通算6アンダーで首位に立った。
1打差2位につけたのが海野憲二で「パットが面白いように決まった」と報知新聞紙によると一番長いパットが11番の4.5メートルで、あとは2メートル以内の8バーディー(1ボギー)の65と、コース新記録をマークした。3位に内田茂、4位に宮本省三がつけ、石井朝は4打差5位に杉原輝雄、藤井義将とともに並んだ。
最終日は36ホールで、橘田は午前を3バーディー、2ボギーで1つスコアを伸ばして通算7アンダーとし、2位に3打差をリードで午後の18ホールに入った。そこからカナダカップ帰りの影響が出てくる。帰国後「毎日4時間ぐらいしか眠れなかった」という疲労の蓄積が出たのか「午後からは勘が鈍って、ゴルフにならなかった」と振り返るように、アウトで1つ落とし、インに入って13番パー3で左に曲げてボギー。15番でバーディーを奪った内田と5アンダーで並ぶ。16番パー3でともにボギーとして最終18番へ。橘田は第2打を手前にショートしたがアプローチで1メートル弱に寄せた。内田は6メートルのバーディーパットを狙って1.2メートルほどオーバー。返しを外し、橘田がパーパットを入れて辛くも逃げ切った。
橘田は日本オープン初優勝。転がり込んできた感じの勝利に「彼(内田)は無駄なことをした」とぽつりとつぶやいたという。テレビインタビューには「最後に私のまずいプレーを見せたので、うれしいどころか…」と切り出した。日本プロ2勝、関西オープン3勝、関西プロ1勝に加えて公式戦7勝目(当時)。念願のタイトル獲得にも表情は厳しいままだったという。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
橘田規(きった・ただし)1934(昭和9)年4月20日~2003(平成15)年3月22日。19歳でプロ入りし、23歳の時に関西プロで初優勝。米国留学ではゴルフ場のプロショップで働きながら言葉やシステムを学び、技術的にも大きく成長した。トップの位置が低く「水平打法」として知られている。日本3冠(日本プロ2勝、日本オープン2勝、日本プロマッチプレー)を達成したほか、関西オープン3勝、関西プロ2勝はじめ主要タイトルをほぼ手中にしている。1961年から5年連続でワールドカップ代表。弟・光弘も1970年に日本オープンを制し、初の兄弟優勝を飾っている。2015年度に日本プロゴルフ殿堂入り。
第30回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 橘田 規(広野) | 284 | = 69 69 71 75 |
2 T | 海野 憲二(大箱根) 内田 繁(関西PGA) 能田 征二(城陽) |
285 | = 74 65 74 72 = 72 68 73 72 = 73 75 71 66 |
5 | 柳田 勝司(小倉) | 286 | = 73 70 69 74 |
6 | 鈴村 久(三好) | 288 | = 75 71 73 69 |
7 T | 藤井 義将(霞ヶ関) 山口 征二(霞ヶ関) |
289 | = 73 69 70 77 = 73 71 73 72 |
9 T | 陳 清波(関東PGA) 安田 春雄(関東PGA) 杉原 輝雄(関西PGA) |
290 | = 68 77 75 69 = 73 72 72 73 = 72 70 72 76 |
参加者数 127名(アマ25名)