第88回日本プロゴルフ選手権(2021年)
2021.12.27
優勝トロフィーを掲げる金 成玹(キムソンヒョン)(写真提供:日本プロゴルフ協会)
キムが逆転で日本初タイトル
新型コロナウイルスの感染症の世界的なパンデミックにより、2020年の大会が延期され、2年ぶりの開催となった。舞台も前年開催予定だった栃木・日光カンツリー倶楽部(7236/7207ヤード、パー71/70)で行われた。雨の中での第1ラウンドで、首位に立ったのは木下裕太。インスタート1組目で出た木下は12番パー3でグリーンを外し、寄せも3メートルほど残ったが「うまく入れられた。朝イチでボギーを先行させずに済んだので、バーディーを量産できたと思います」と振り返った。15,16番連続バーディーで流れに乗って6バーディー、ボギーなしの65。「ドライバーはフェアウエーを捕らえたし、アイアンはピンに絡み、パットはチャンスで入ってくれました」と頬を緩ませた。
48歳のベテラン、現役唯一の永久シード選手の片山晋呉が1打差2位につけた。1番でボギースタートだったが2番で取り返し、5番でバーディーを先行させた。後半は15番から3連続バーディー。PGAWEBによると「初日としては良い発進ができましたね。練習ラウンドでコースの難しさを感じたけれど、コース自体は(自分にとっては)好きそうだと思いました」と話している。
もう1人、1打差2位発進したのが岩田寛。「(前半は)雨が強かったですね。後半は小やみになり、ティーが前だったし…」と、後半アウトで4バーディーなど67で回った。「練習ラウンドではグリーンのタッチがまったく合わなかった。
(試合になって)次第にタッチが合い出した」と振り返った。
前大会覇者の石川遼は5バーディー、1ボギーの67で2打差7位発進になった。「良いゴルフが出来て、プレーしていて楽しかった」といい、右OBをした最終9番については「ボギーで上がれたので明日以降も上位争いに着いて行けるように頑張りたい」と話した。
第2ラウンドでは、2018、19年賞金王の今平周吾が首位に浮上した。前半でスコアを2つ伸ばし、後半は3バーディー、ボギーなしの66で回り、通算8アンダーでフィニッシュした「ショットが良かったですね。ドライバーが少しブレた時もありましたが、アイアンは2日間ほぼ完ぺきでした」と振り返った。
2020年最終予選会34位の資格で出場の芦沢宗臣が、5アンダースタートから3つ伸ばして今平と首位に並んだ。同志社大学出身で2016年にプロ転向した26歳の芦沢は、6番で10ヤードほどをチップインのバーディーで流れに乗った。15番でもチップインバーディーを決めた。「ロングヒッターではなく、アイアンでバーディーチャンスを作っていくタイプです。ティーショットでフェアウエーをキープできているのが、好スコアにつながっていると思います」と振り返った。
1打差3位には谷原秀人、石川遼、片山晋呉、山本豪の4人が続くなど、混戦模様になった。
第3ラウンドで会心のゴルフを展開したのが2009年の大会覇者の池田勇太だった。2、4番でバーディーを奪い、8、9番連続バーディー。後半も危なげないプレーでこの日結局7バーディー、ボギーなしの64をマークし、通算12アンダー単独首位に立った。「3日間、ショットがいい形で打てている。好調さを保てているから、パット次第だとは思っていました。癖のあるグリーンで、決め切れない数が減って来てのスコア」と話した。2003年日本オープンでローアマに輝いたのがこのコース。「自分にとって(ゴルフ人生の)スタート地点だし、プロ初優勝が日本プロだった」と因縁の舞台で優勝を目指す。
前年の日本オープン覇者の稲森佑貴が1打差の2位につけた。持ち味のショットが好調で66をマーク。「アドレスの取り方を自分がしっくりする構えにしたら型にハマりました」と話し、最終日に向けて「遠慮せず、自分のゴルフを貫きたいです。林間コース、タフなセッティング、我慢比べは好きですから」と、日本オープン2勝に続く日本タイトルに意欲を見せた。
1打差10アンダーにキム・ソンヒョン、さらに1打差で岩田寛と小野寺享也という展開になった。
雨模様となった最終ラウンド、3位スタートのキムが序盤で首位を捕らえる。1番で3メートルのバーディーを決め、4番でも6メートルを入れて首位池田に追いつく。後半に入ると混戦になった。一時首位に4人が並び、終盤まで勝負の行方は分からなかった。最終組が17番を迎えたときに、首位にいたのは13アンダーの池田、稲森、キムの3人。ボギーをたたいた池田が一歩後退して最終18番へ。稲森の第2打がグリーンを捕らえられず、右ラフへ。それを見たキムは「ピンをデッドに攻めようと思っていましたが、無理をせず、センター狙いにショットプランを変えました」と振り返る。稲森のアプローチが寄らず、思惑通り2パットのパーで収めたキムが、ボギーになった稲森に競り勝った。
悔しい負け方になった稲森は「17番のバーディー(4メートル)を決めていれば…18番がボギーでもプレーオフには持ち込めると思いました。決めなかった時点で(キムに)利を譲った感じになってしまった。本当に、もったいないことをしたなと思います」と振り返った。
日本タイトルで日本ツアー初優勝を飾ったキムは「今日は決してスムーズにスコアをまとめられたわけではありません。それでも、最後まで諦めず集中して出来たのが勝因に繋がったと思います」と話した。22歳での日本プロゴルフ選手権優勝は戦後最年少記録になった。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
キム・ソンヒョン(金成玹) 1998年9月17日生まれ、韓国・釜山出身。プロゴルファーの父の手ほどきでゴルフを覚え、アマ時代は国家代表選手として活躍。2017年にプロ転向。18年のQT4位で日本ツアーに参戦し、19年に初シードを獲得した。ツアー通算1勝。
第88回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 金 成玹(キムソンヒョン) | 271 | = 66 70 67 68 |
2 T | 池田 勇太 稲盛 佑貴 |
272 | = 70 67 64 71 = 68 68 66 70 |
4 T | 小野田 享也 片山 晋呉 |
273 | = 68 68 68 69 = 66 69 70 68 |
6 | 岩田 寛 | 274 | = 66 71 67 70 |
7 | J・チョイ | 275 | = 70 66 72 67 |
8 | 大槻 智春 | 276 | = 70 69 68 69 |
9 T | 勝俣 陵 深堀 圭一郎 幡地 陸寛 木下 裕太 古川 雄大 今平 周吾 高山 忠洋 |
277 | = 71 67 71 68 = 72 70 67 68 = 69 69 70 69 = 65 71 71 70 = 69 68 70 70 = 68 66 72 71 = 70 69 68 70 |