トロフィーを掲げる稲見萌寧＜Photo:Getty Images>

大会新記録の圧巻プレーで稲見萌寧が公式競技初優勝

　新型コロナウイルス感染拡大の影響がなお続いた2021（令和3）年、女子ツアーは38試合が無事開催された。多くの大会が中止となった前年と合わせて2年で1シーズンという前例のない形となり、シーズン総試合数は「52」。賞金女王に輝いた22歳の稲見萌寧は2億5519万2049円という獲得賞金歴代最高額を記録した。
　日本女子プロは9月9日から4日間、茨城県の静ヒルズＣＣ（6680ヤード、パー72）で行われた。残念ながら無観客。前年大会同様、ギャラリーの歓声がない中での開催となった。
　大会を迎えた時点で賞金ランキング1位は5勝をマークしていた小祝さくら。稲見は小祝を上回る7勝を挙げていたが賞金ランキングは2位。前週のゴルフ5レディスでは初日のラウンド中に左腕を虫に刺されて棄権するというアクシデントがあったばかりだった。
　その稲見の初日はティーショットが安定しなかったが4バーディー、2ボギーの70にまとめて11位スタートとなった。首位に立ったのは勝みなみ。6アンダーの66をマークして2位に2打差をつけた。海外参戦から帰国後2週間の隔離明け初戦となった4選手のうち青木瀬令奈は1アンダー、72で26位につけたが渋野日向子、古江彩佳、原英莉花はそれぞれ42位、87位、118位と出遅れた。
　初日首位の勝は2日目も70と確実にスコアをつくって通算8アンダーで首位を堅持した。日本女子プロは過去3度の出場がいずれも予選落ちと精彩を欠いていたが、初めての予選通過で優勝を狙える勢いだ。
　2位グループは通算6アンダーの5人。稲見は11番まで4バーディー、ボギーなしと快調にプレーしていたが以降は2ボギーとスコアを落とし、通算4アンダーの10位となった。
　3日目、稲見が見事なゴルフをみせる。フェアウエーを外したのも、パーオンを逃したのも2回だけという精度の高いショットを武器にこの日ベストスコアの7アンダー、65をマーク。通算11アンダーとして一気に2位に浮上した。
　首位に立ったのは66で回って通算12アンダーとした19歳の西郷真央。まだ優勝はないが、この時点で賞金ランキング9位と地力の高さを示していた。勝てば大会最年少優勝という記録がついてくる。
　新鋭だけでなく大ベテランも存在感を示した。44歳の大山志保だ。2位で迎えた3日目に67としっかりとスコアを伸ばして稲見と同じ通算11アンダー、1打差の2位。通算18勝、2006（平成18）年には賞金女王にも輝いた実力者が西郷、稲見とともに最終日最終組で大会初優勝に挑むことになった。
　穏やかな天候となった最終日、稲見がシーズンの好調さを物語る隙のないゴルフを見せつける。大山とともに1番でバーディーを奪って西郷に並ぶと4、6番もバーディーとして抜け出していく。大山が7、8番連続バーディーで稲見を捕えるが、9番パー5で2オンを狙ったショットを池に打ち込んで痛恨のボギー。このホールできっちりバーディーを取った稲見が再び単独首位に立った。
　稲見は10、11番でもバーディーを奪って西郷と大山を突き離す。終わってみればこの日は8バーディー、ボギーなしの64をマーク。4日通算19アンダー、269は大会新記録。特に決勝ラウンドは2日間で15アンダーという圧巻のゴルフだった。
　8月に東京五輪で銀メダルを手にし、次の目標に掲げていた「公式競技初優勝」をあっさりとクリア。「目標のトーナメントで優勝できた」と声を弾ませた。そして「誰も勝てないくらいの実力をつけたい。大差をつけて勝ち続けることが理想」とさらなる高みを目指す意欲を口にした。

プロフィル

稲見萌寧（いなみ・もね）1999（平成11）年7月29日生まれ
東京都出身。日本ウェルネス高校時代にはビッグタイトルは手にできなかったがプロ入り後に素質が開花。プロテスト合格翌年の2019年に初優勝を挙げて賞金ランキング13位に入ると、2020－21年シーズンは9勝をマークして歴代最高額で賞金女王に輝いた。21年の東京五輪ではL・コとの銀メダルプレーオフを制して日本ゴルフ界初の五輪メダリストに。

第54回日本女子プロゴルフ選手権成績