第24回日本プロゴルフマッチプレー選手権(1998年)
2021.09.21
1998年9月7日付日刊スポーツ紙
桑原克典が決勝38ホールの激戦制して初優勝
マッチプレーで強さを発揮してきた丸山茂樹の連覇がなるかが注目された大会。北海道・ニドムクラシックCニスパC(6941ヤード、パー72)で行われた。丸山がこれまで5大会に出場して17勝4敗と勝率.810で青木功、中嶋常幸の複数回優勝者を上回る勝率を誇っていた。第1日の1回戦(18ホール)、丸山は上々の滑り出しをみせた。日大の先輩、米山剛と対戦。1ホール目パー5で6メートルのイーグルパットを決めて、華々しい1アップでスタートした。その後もピンチらしいピンチはなく、米山に付け入るスキを与えない。2アップで前半を折り返し、インでは2つのパー5でバーディーの引き分け、あとはパーで分け、リードを保って16ホール目。第2打を50センチにつけて、3-2で振り切った。スポーツニッポン紙によると「完璧です。言うことないです」と自画自賛している。
1回戦からエキストラにもつれ込む対戦も。谷口徹―細川和彦は取り合いの中、16ホール目で細川が追い着いてエキストラへ。史上2番目となる23ホール目に細川が第1打をOBにして決着した。尾崎健夫―東聡のジャンボ軍団対決では、16ホール目まで2ダウンの尾崎健が17、18ホール目を取って並びエキストラへ。21ホール目のパー5で先に50センチのバーディーにつけた尾崎健だったが、東がピン左手前13メートルのカラーからのイーグルトライを見事に入れて勝利した。尾崎健は「先にOKにつけてよそ見してたら東のボールがないんだよ」(日刊スポーツ紙)と肩をすくめた。
第2日は2回戦と準々決勝(各18ホール)。丸山は好調を持続した。2回戦で谷口に5-4の大勝。「スキがない。すごさを感じた。完敗です」と谷口は舌を巻いた。準々決勝の相手は尾崎直を下して上がってきた横尾要。7ホール目まで4アップも、横尾の反撃にあって10ホール目で2アップに縮められたが、ここから加速。11ホール目を相手のミスで取り、13ホール目パー3でバーディーとすぐに4アップに戻し、14ホール目へ。バンカーからの寄せをOKにつけ、横尾が3メートルのパーパットを外して、こちらも5-4で退けてベスト4に進んだ。この大会ではまだボギーなし、前年から54ホールボギーなしに「偉い。全部目標の68を切っているのも偉い」と気分も上々だ。
桑原克典が外国勢2人を下して4度目の出場で初めてのベスト4に進んだ。2回戦でブライアン・ワッツにはスタートから5ホール連続でアップした。途中、OK(コンシード)を巡ってワッツが怒る場面もあり、駆け引きの勝利だった。準々決勝ではエドアルド・エレラにこれも1、2ホール目連続アップでスタート。13ホール目でボギーにして追いつかれたが、14ホール目から3連続バーディーと爆発力をみせて突き放し、3-2で勝ちあがった。「勝ちたいという気持ちが出たんです。決勝で(同期の)丸山とやりたい」と意気込んでいた。
他に、横田真一、ゾー・モウがベスト4に進んだ。
第3日の準決勝は36ホール。丸山は横田と対戦。海外遠征帰りの丸山は好調なゴルフを展開してきたが、さすがに疲れが見えてきた。14ホール目でこの大会初ボギーをたたき(ともにボギー)、15ホール目も連続ボギーで横田が1アップ。その後横田が着実にアップを重ね、28ホール目で5アップと大量リードを奪った。丸山も意地を見せ、29、31ホール目で取り返して32ホール目へ。50~60センチのバーディーパットを外し、パーで分けたところで勝負あり。横田がそのまま逃げ切って3-2で勝利した。
丸山は「横田には悪いけど、今日は自分の力を発揮できなかった」と話した。丸山を慕う横田は「今日は大事なパットが全部入ったと思う。丸山さんは調子悪かったし、勝ってもあまりうれしくない」と話している。横田は26歳7カ月で、優勝すれば丸山の27歳11カ月を更新する最年少優勝に王手をかけた。
もう一方の準決勝は、桑原―モウ。1、2ホール目を桑原が取ったが、3ホール目から3連続でモウが取る派手な序盤。イーブンで折り返した。後半、先に桑原が22,23ホール目を取ってリードする。その後は取ったり、取られたりで終盤へ。32ホール目で桑原がボギーをたたいてリードは1つに。33ホール目、2メートルほどのバーディーを決めた桑原が2アップとして優位に立ち、34ホール目でモウがボギーをたたいて、3-2で振り切った。
外国勢3人を撃破して初の決勝に進んだ桑原は「バーディーを取らないと勝たせてもらえないと思った。早めに勝とうなんて思わないで、エキストラでも勝てばいいという気持ちでした」と話した。同期・丸山との決勝対決がなくなったが「横田君に勝てば、この試合だけでも丸山の上に立つことになる」と、ライバル意識は変わらなかった。
桑原29歳、横田26歳の20代対決となった最終日の決勝(36ホール)。これまで序盤にアップして試合をつくってきた桑原が、決勝でも先に仕掛ける。2、4ホール目で横田のボギーで先行、6ホール目でバーディー、9,11ホール目で横田のミスと、5アップで優位に立った。横田も反撃。折り返し休憩をはさんで15、19、21ホール目でバーディーを奪って2ダウンまで戻した。その後、パーでの分けを重ねて27ホール目パー3で桑原がバーディーを取って3アップに。横田は30、31ホール目のバーディーを奪い、33ホール目で桑原は1メートルを外してボギーをたたき、ついにイーブンとなった。
「(リードを)キープしようと消極的になっていた」(スポーツニッポン紙)と桑原は試合後振り返っている。36ホール目、横田は4メートルのチャンスで入れれば勝ちだったが外した。「入れなきゃいけなかったパット」と横田は振り返っている。エキストラに突入した。37ホール目をパーで分け、38ホール目。バンカーに入れた横田が4メートルと寄せきれず、先にパーで上がった桑原が見つめる中、パーパットはカップを通り過ぎた。決勝では最長タイの38ホールで決着、桑原の初優勝が決まった。
8時間9分の激闘、桑原は1回戦から112ホール目で栄冠を手にした。「優勝カップをもらっているときは夢を見ているようでした」という。「勝ちにいって勝てたのは初めて。充実感があります」と、20代では中嶋常幸、丸山に続く日本タイトルの感激に浸った。
(文責・赤坂厚)
プロフィル
桑原克典(くわばら・かつのり)1969年4月4日生まれ、愛知県出身。10歳でゴルフを始めた。愛知学院大では、89年文部大臣杯優勝。92年、プロテストに一発合格した。95年にアコムインターナショナルでツアー初優勝を飾る。レギュラーツアー通算2勝。現在はシニアツアーで活躍している。