1987年7月27日付報知新聞

外国人選手への門戸開放初年度、イシイが勝った

　外国人選手に門戸を開放した大会で、勝ったのは米国ハワイから日本ツアーに参戦しているデビッド・イシイだった。
　日本プロゴルフ協会は、1988年シーズンから賞金シード選手を前年賞金ランク40位以内から60位以内に拡大することに伴い、賞金ランクに含まれる外国人選手にもこの年から日本プロへの出場を認めた。前年86年賞金ランク40位以内だった4選手が参加した。
　大会は、千葉・浜野ＧＣ（7217ヤード、パー72）で行われた。第1日は気温32度、時折10メートルを超えるような強風という厳しいコンディション。首位に立ったのは三上法夫だった。４バーディー、２ボギーの２アンダー70で回り「ドライバーからアイアンまでまあまあ。深いラフに何度か入ったけど、打ちやすい順目だったのでラッキーだった」と報知新聞紙にコメントしている。１打差で２位につけたのは中村忠夫、寺本一郎。直前の全英オープンに出場した尾崎将司と、全米オープンから米ツアーに転戦して6週間ぶりの国内戦となった青木功がともに１オーバー12位でスタートした。
　第２日、上位には「初出場」の外国人選手が浮上する。２週間前に挙式したばかりのイシイは、３番から３連続バーディーを奪うなど、５バーディー、ボギーなしでこの日のベストスコア67をマークして通算４アンダーで一気に首位に立った。日刊スポーツ紙は「せっかくチャンスだからこのビッグタイトルを取ってみたい」というコメントを報じている。同じく首位に並んだのが、オーストラリアのブライアン・ジョーンズ。全英オープンからの転戦だったが５バーディー、１ボギーの68で回った。こちらも「ここで優勝すれば日本のゴルフ界の歴史に名を残せる」と、門戸開放に意気込みを見せる。１打差３位には台湾の陳志明と、岩下吉久がつけた。この日（7月24日）、47歳の誕生を迎えたベテランの金井清一が２打差５位に浮上し「外人に勝たせられん」（報知新聞紙）と、初優勝した大会への思いを口にしている。青木は４打差７位と圏内につけていたが、尾崎将は78をたたいて49位に後退と明暗を分けた。
　第３日はさらに暑さが厳しくなる中で、通算７アンダーにスコアを伸ばしたイシイとジョーンズが首位を守った。日本勢では横島由一が６番から4連続を含む７バーディー、ボギーなしの65で回り、通算５アンダーで一気に３位に上昇した。1971年に19歳でプロテストに合格し、24歳で初優勝して期待されたが、十二指腸潰瘍を患うなど伸び悩んだ。77年産報クラシックの第2日2番で1ホール16の「大たたき記録」の保持者でもあった。日刊スポーツ紙は「勝てば５年後までシードを保証されるから魅力がある。試合に出られない苦労をいやというほど味わいましたから」と気持ちを伝えている。
　最終日、猛暑の中で我慢比べとなった。スコアは伸びず、前半1つ伸ばしたイシイが後半はすべてパーでしのいだ。通算８アンダーで並んでいたジョーンズは17番パー３（218ヤード）でグリーン左奥のバンカーのふちに止まるミスショットでボギーとして１打後退。イシイが逃げ切った。ベテラン金井が2アンダー70と粘って１打差２位に食い込んだ。この日は青木が猛追。８番から４連続バーディーで通算６アンダーとしてファンの期待を集めたが、そこから伸びず２打差４位に「４連続の時は乗ったね。12番のボギーがいただけない。あれでプッツンしてしまった」（報知新聞紙）と、話している。
　イシイはこの日（7月26日）が32歳の誕生日だった。初の公式戦タイトルへのプレッシャーから、スタート前は「このまま逃げ出したい。できることなら雷で中止になってほしい」（日刊スポーツ紙）とまで思ったという。飛距離よりも正確さが持ち味。この日も正確にグリーンをとらえ、パーを積み重ねていったのが勝因だった。初出場初優勝に「公式戦のチャンピオンになれて光栄。これまで出場したくても出場できなかった大会だけにうれしい」と、コメントしている。イシイは賞金ランクトップに立ち、この年、外国人選手として初めての賞金王にも輝いた。

プロフィル

デビッド・イシイ 1955～
1955年７月26日生まれ、米国ハワイ・カウアイ島出身。マウイ高卒業後、米本土のヒューストン大のゴルフ部で活躍。1979年にプロ転向。米ツアーテストを1979年から３年連続で受けたが、資格を取れず断念した。日系３世で、日本には1980年から参戦し、日本ツアーを主戦場とした。1987年に６勝を挙げて賞金王。レギュラーツアー通算14勝。一度は断念した米ツアーでは、90年ハワイアンオープンで念願の優勝を飾っている。

第55回日本プロゴルフ選手権