第67回日本プロゴルフ選手権(1999年)
2016.06.06
1999年5月17日付スポーツニッポン
尾崎直道初V、尾崎3兄弟初のワン・ツー・スリー
難関グリーンといわれた石川・GCツインフィールズ・ゴールドC(7136ヤード、パー72)で5月13~16日に行われたこの大会、もう達成されないであろう記録が生まれた。尾崎3兄弟が初めて1、2、3位に顔を並べた。第1日、首位に立ったのは前年の日本オープンを制した田中秀道だった。18ホールのうち7ホールが2段グリーンなど、大きく強いアンジュレーションのグリーンで、ピン位置によっては難度が増す。この日、田中秀は「バーディーを狙うな。パー4はパー4.5と考えよ」という気持ちで臨んだことをスポーツニッポン紙は伝える。無理な攻めをせずに、5バーディー、2ボギーの3アンダー69。最終18番では「気持ちよくボギーでいいと思った」という6メートルのパーパットが入っての首位発進だった。1打差2位に尾崎直道、細川和彦、伊沢利光、R・バックウェルがつけた。尾崎直も「ここはグリーンを狙っていけない。外した方がピンに近い」と攻略法をコメントしている。
第2日にハプニングが起きる。選手会長の倉本昌弘が14番で1発目を左OB方向に打ち込み、暫定球も同じようなところに飛んで7発の暫定球、計8発を打った。セーフティーエリアに2発残っていたが、暫定球に目印をし忘れ、暫定球の宣言もしていなかった。ギャラリーが指摘する最初の球を打ったが「感触から最初の球じゃないと感じた」といい、誤球で失格と思い込んで競技委員に報告、裁定を仰がず失格を申し出て引き揚げた。しかし、裁定集によるとそのままプレーしてよかったため、途中棄権とみなされ、後味の悪いプレーになった。通算3アンダーで田中秀、尾崎直、伊沢の3人が首位とスコアが伸びない展開になった。この日、米国のプロ初のグランドスラマー、ジーン・サラゼン氏が93歳で亡くなったニュースも入ってきている。
第3日から、尾崎3兄弟が主役になる。8位でスタートした次男・尾崎健夫が1イーグル、5バーディー、1ボギーの66で回り、通算6アンダーで首位に立った。17番パー5のイーグルはグリーンエッジから6メートルをパターで入れ、バーディーのうち4つはグリーンの外から。「チップイン5個なんて世界記録じゃないの」と、日刊スポーツ紙が尾崎健のコメントを伝える。難しいグリーンに、尾崎健が「裏攻め」と称したグリーンエッジ、ラフに外してチップインを狙う攻めが決まった。3男・尾崎直は4打差2位に後退したが「思いっきりうっちゃりたいね」と話している。長男・尾崎将はこの日70とジワリと浮上し、5打差ながら5位につけた。「(健夫に)チップインが出るのは運気があるからだろう。あいつが普段のゴルフをすれば勝てるが、問題は優勝という2文字のプレッシャーだ」と、健夫に6年間、ツアー146試合優勝がないことを心配する口ぶりだったという。
尾崎3兄弟は最終日前夜、そろって食事をしたという。その最終日、尾崎健の1つ前の組で尾崎直が1番パー5をイーグルで発進する。「あれを見ちゃったからなあ」という尾崎健は1、2番をボギーとして4打差がなくなり、早くも首位に並ぶ。尾崎直は4、5番連続バーディーで突き放した。尾崎将は1番ボギー後、3つのバーディーを奪ったが、後半伸びずに通算3アンダーでホールアウト。尾崎直は17番パー5で2打差だった1つ前の組の尾崎将が、2オンしたものの3パットでパーに終わったことで「勝ったと思った」という。通算5アンダーでそのまま優勝。4バーディー、8ボギーの76をたたき、自滅した形で通算2アンダーに後退した尾崎健に、18番で「悪かった」と声をかけた。
スコアボードには1位尾崎直、2位尾崎将、3位尾崎健と3兄弟の名前が連なった。日本プロで3兄弟全員が歴代優勝者に名を連ねるのは初めて。1977年に尾崎直がプロ入りして23年目で「3兄弟ワン・ツー・スリーフィニッシュ」が実現。しかも公式戦での達成だった。尾崎直は日本シリーズ、日本プロマッチプレーに続く日本3冠となり、同年日本オープンを制して4冠、2度目の賞金王にもなった。
プロフィル
尾崎直道(おざき・なおみち)1956年5月18日生まれ、徳島県出身。兄2人を追って尾崎将の元で13歳からゴルフを始める。千葉日大一高を卒業後、1977年にプロテストに合格。1984年静岡オープンでツアー初優勝を飾る。1991年に4勝を挙げて初の賞金王。1993年からは米ツアーにも挑戦している。1997年ヨネックスオープン広島でツアー通算25勝目を挙げて永久シード選手に。ツアー通算32勝。賞金王2回(91、99年)。日本オープン(99、00年)日本プロ(99年)日本シリーズ(88、89、91年)日本プロマッチプレー(90年)と日本タイトル4冠を達成している。
第67回日本プロゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 尾崎 直道 | 283 | = 70 71 73 69 |
2 | 尾崎 将司 | 285 | = 76 69 70 70 |
3 | 尾崎 健夫 | 286 | = 72 72 66 76 |
4 | 細川 和彦 | 288 | = 70 73 71 74 |
5 T | 桑原 克典 トッド・ハミルトン 鈴木 亨 高橋 勝成 |
289 | = 73 71 76 69 = 73 71 74 71 = 74 74 69 72 = 71 72 71 75 |
9 T | 金 鍾徳 芹澤 信雄 |
290 | = 74 69 76 71 = 73 73 71 73 |